カリフォルニア州マンモスマウンテンの朝、空は青く空気はピンと張り詰めていた。4月とはいえ、マンモスの朝の空気は冷たい。今年も世界中のPBRJの大会を勝ち上がった猛者たちが、マンモスマウンテンに集まっていた。この大会は世界中のチャンピオンたちの中から真の勝者を決めるチャンピオンシップだ。
今年のアイテムはZone 1に Flat Down Rail、Zone 2に Waterfall Rail、Zone 3に 50’ Long Flat Down Railの全3ゾーンから構成された。写真でわかるとおり、例年に比べると比較的マイルドな設定だ。とはいえ、ここにいるメンツを見れば一見イージーなアイテムはかなり厄介だ。なぜならメイクしやすいアイテムこそ、多くのトリックを生み出す絶好のチャンスだからだ。
その予想は公開練習で的中した。Under 15、Over 16、ガールズ、そしてオープンが一斉に入ってスタートした公開練習は出だしからお口あんぐり。トリックを温存するどころか、とりあえず出来そうなトリックを惜しげも無く繰り出すかのように次々とニュートリックが飛び出した。本戦が楽しみにもなったが、日本勢がどこまで活躍出来るか。厳しい戦いになりそうだ。
TEAM JAPAN enjoying at PBRJ champs!!
開会式の時に驚きのアナウンスが告げられた。例年おこなっている予選からの決勝のシステムをやめ、いきなり各ヒート全員での30分ジャム。そのジャムの結果で順位を決定するというものだった。今回日本から参加したライダーは過去最多の7名。Under15では石打大会優勝の飛田流輝、ガールズでは石打大会優勝の佐藤夏生、石打大会2位の佐久間 成美(夏生がコロラド州キーストン大会で出場権をゲットしていたため繰り上げ)、カナダ・レイクルイーズ大会優勝のMutsumi Ido、そして3位のHitomi Tanakaの4名。さらにオープンクラスは前回決勝進出を果たし、今回はレイクルイーズ大会で5位に入ったボルコムライダーの小川凌稀と石打大会で優勝した熊田一貴。Under15とメンズオープンでは過去日本人入賞者が出ていない上に、ガールズもここ数年は決勝進出止まりとなっていた。
さっそくUnder15クラスからスタート。このクラスの特徴は成長期ということで体格差が物凄い。中には小学生くらいのライダーから170cmは十分にあるような中学生ライダーまでが入り混じっている。それでも会場を湧かせるのは意外にも身体の小さなキッズなんてことも。身体の大きさに関わらず、この年代でもガチのスキルバトルが繰り広げられた。前回大会前日に鎖骨骨折して棄権していた流輝はリベンジとばかりに序盤から攻めまくった。長いフラットダウンを除いてすべてのアイテムを攻略。とくに2キンクレールでは足を蹴りだしたバックサイドリップで全抜きし、会場を沸かせた。フラットダウンのダウン部分だけは抜いたものの、最後まで全流しは結局トライせずにタイムアップ。
昨年のリベンジを目指した飛田ルキの50-50 F3 out
Over16のクラスには日本からの参加はなかった。しかし、このクラスには将来有望な若いアマチュアライダーたちがたくさん参加していた。Under15よりメイク率は数倍アップ、さらに大きな身体から繰り出すダイナミックの動きはさすが。正直オープンクラスが洗練されていたのに比べれば、今大会で一番アグレッシブに怪我を恐れず果敢に攻めていたのはこのクラスだったかもしれない。
ガールズクラスは前回2名が決勝に行くも入賞はできていなかった。その理由は予選での好調が決勝で持続出来なかったこと。そして予選で本意気を出していないトップライダーが決勝になって技のレベルを一気に押し上げるのだが、それについていけなかったということ。今回は予選なしということでこの30分にすべてを出し切るだけだ。ナツキはスタート早々、キャノンで360アウトをビタビタに決めた。この大会ではひとつのアイテムだけで高い得点を出しても総合で得点は伸びない。全部のアイテムをちゃんとメイクしないと上位には入れないポイントシステムになっている。ナツキの技はかなり良かったが、他のアイテムで良い技で立てない。ナルミは時間が経つにつれてアイテムに慣れ、身体も動くようになっていった。そしてフラットダウンで完璧なノーズマニュアルをメイクし、一際大きな歓声が会場から上がった。
惜しくも予選敗退となったが、カナダ仕込みの英語でチームジャパンをサポートしてくれた佐藤夏樹のトランスファー
初アメリカ&初出場からの初表彰台をメイクした佐久間成美
大会最後にメンズのオープンがおこなわれた。日本から参加のクマこと熊田カズキはなんと前日練習で滑っていた時にレールで干されて背中側の肋骨を負傷していた。病院にも行っていないので折れているのかヒビなのかも分からず、とりあえず痛み止めを飲み大会に挑んでいた。そのせいか身体はこわばりうまく技がハマらない。一度、ヒールエッジが抜けてレールに頭をぶつけた。その後すぐに後続のライダーを避けるように動いていたのを見て安心したが、後から聞いた話しだと実はあの瞬間から最後の方まで記憶を失っていたらしい。記憶をなくしている間も、彼はアイテムを変え、技を変え攻め続けていた。記憶が戻ってきた時には残り時間はあと少しになっていたという。
骨折どころか記憶まで飛ばしてまでも攻め続ける熊田カズキにリスペクト!!
そして前回決勝まで行ったリョウキの動きは切れに切れていた。キャノンでのスピンインからのスピンアウト。2キンクレールでのバックテール。そしてあまり誰も攻めていなかったウォールも積極的に攻めていた。ウォールには特別にエレクトリック賞が用意され、最高の滑りをしたライダーに$1,000が贈られる予定になっていた。しかしウォールを攻めるとハイクが倍近くになってしまうこともあり、大会中あまり多くのライダーは攻めていなかった。そこでのリョウキのテールロックから抜いてさらにテールをタップしてアウトする技に大歓声が上がった。その時点でエレクトリック賞は誰の目に見てもリョウキだったが、大会終了後に適当に始まったウォールセッションで目立った滑りをしていたライダーがエレクトリック賞に選ばれた。なんとも悲運な結末だ。と思っていたらリョウキ5位のアナウンス。日本人初の入賞を果たした。ガールズでは過去優勝経験のある鬼塚 雅に続いて2人目となる入賞者が誕生した。安定した滑りで終始魅せ続けた佐久間 成美の名前がコールされた。日本人ライダー男女ダブル入賞を果たした。
ハーフキャブからの50-50 to F3 out! ドレッドをなびかせてキレキレのリョウキ
そしてボトムのウォールでフロントロックでギャラリーからの歓声が沸く
今回は2人が表彰台に上がる快挙! おめでとう、成美&稜稀! 来年はその頂点を目指してほしい!!
by A2C (Freerun Magazine)
Photos by Akira Onozuka